終章

32/40
前へ
/1088ページ
次へ
「見事に叩かれているな」  テレビを見ながら、男が言った。  宝は、ベッドに座ったまま、ミネラルウオーターで喉を潤しつつ、テレビの画面に目を向けた。  今週の初め、千華子がテレビ局の取材に応じて出した短いコメントは、そのテレビ局では、目玉証言として報道された。  「ついに謎の事件の証言が取れた!」と。  だが、しかし。  流された千華子の証言はとても短く、真っ当すぎるぐらい真っ当なものだった。  狂気じみた物を―野次馬根性で面白がって期待していた視聴者達は、テレビ局を責めた。  それこそ誇大広告だ、視聴者をバカにしているのか、と。  そうして。  事態は千華子が望んでいたものとは、別の方向へと向かい始めてしまった。  曰く、テレビの誇大した報道問題とか。  視聴率を取るための、捏造とか。  そう言った問題の方へと視聴者の意識は向かっていった。  結局千華子の証言を報道したテレビ局が謝罪して、それが今日の朝テレビで流れていた。 「これ、わざとか?」
/1088ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4762人が本棚に入れています
本棚に追加