終章

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 彼らも、あのままだったら悪鬼化していただろう。  もしそうなっていたら、宝も、愛理も、護も死んでいたに違いない。  だがそれを、千華子が阻止した。  子守唄を歌い、子ども達の記憶を甦らせて、その「哀しみ」を癒した。  そのおかげで、宝は死ぬこともなく、愛理と譲をこの世界に連れ戻し、悪鬼と化した若葉の「欠片」も、回収できたのだ。  その「欠片」は、警察病院に入院した譲に渡した。  「欠片」は「欠片」だ。  それを持っていても、「若葉」は生き返らないし、それは、遺骨と同じようなものだった。  かつて「若葉」として存在していた者の、一部。  それを譲がどうするのか、宝は知らない。  ただ、本当に貝殻ぐらいの大きさの白い欠片を渡すと、譲はそれをぐっと握り締めて静かに泣いた。
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