終章

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 悪鬼に半ば「同化」していた愛理は、意識は戻ったが記憶の混乱を起こしていて、母親と弟と過ごしていた頃までの記憶しかない。  何れ回復するだろうと医師は言ったが、それでも時間は必要になるだろう。  そんな中、廃園が決まった「愛育園 若草の家」で働き続けることを千華子が選んだと、宝は香から聞いていた。 ―それでも、あの子を助けてくれたでしょ?本当に、ありがとう。  微笑みながら、少女―理華子は頭を下げて、そして消えた。 「……あれは、何だ?」  その直後、男が振り返りながら言った。 「どうして、あんな恐ろしい者と平気で話せる? あれは、聖と邪の狭間にいる者だぞ!?」  いつも飄々している男の珍しく取り乱した姿に、牽制の意味もあったのか、と宝は気付く。 「だから、言っただろう? 瓜生千華子には手を出すなって。『退魔』の力を持つ者、『破邪』の力を持つ者、『守り』の力を持つ者を守護に持っているけれど、あの姉がその中でも、一番『力』を持っている」
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