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千華子にわかるのは、新見じゅえるは死んでもなお、母親の愛情を求めていて、だけどその気持ちが叶うことがなかった、ということだけだ。
「私には、わかりません……」
願ったのは、唯一つ。
教え子の、幸せだった。
後にも先にも、それ以外望んだことはなかった。
だが、その願いは叶わなかった。
そう……叶わなかったのだ。
「わかりません、本当に……!」
「千華ちゃん……」
かわいい女の子だった。
本当に、心の底から未来を信じていた。
幸せになると、信じていたのだ。
あんな死に方を、あんな惨い事をする子ではなかったのだ。
千華子は目を閉じたまま、流れていく涙を止めることができなかった。
だけど、その涙が、新見じゅえるに届かないことを、十分にわかっていた。
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