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「まったく、自己陶酔の塊だな。この花束は」
葬式の帰りなのだろうか。
真っ黒なスーツの上着を、肩越しに持っていた男は、千華子のすぐ足元にある、バケツを見ながら言った。
「そう思わないか?」
「えっ?」
そうして顔を挙げ、千華子に同意を求めるように言葉を続ける。
「だって、そうだろう? ここに花を供えた奴らは、殺された子どもが生きていたころは、絶対に係わろうとしなかったぜ。だが、報道されたとたん、手の平を返したように、花を供えだす。まあ、実際に関わるのと違って、花を持ってくるだけだからな。簡単なものさ。そして、それで満足する。『自分はいいヤツだ』ってな」
「……」
「そのくせ、自分の『善意』がちゃんと扱われないと、怒るからな。花をそのまんま放置したら、絶対文句言ってくるよな。『せっかく供えたのに』ってさ」
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