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千華子は、呆然となって男を見た。
「あんたも、災難だな」
「仕事ですから」
「えっ?」
「仕事である以上、やることはやります。お客様の感情と、そのことは、また別です」
眉根を寄せる男に反論させないように、千華子は言葉を続けた。
確かに、男の言うとおりなのかもしれなかった。
花を供えた人達のなかには、自己満足で店の前に花を置いていったのかもしれない。
だが、それを理由に、供えられた花束を放置しておくのは、論外だ。
はっきり言って、「大人」の態度ではない。
「ホンネとタテマエってヤツ?」
「あなたは、そうじゃないんですか?」
だが千華子は、そう問いかけた。
その瞬間。
男の目に、鋭い「なにか」が走ったような気がした。
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