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そういえば彼は言っていた
『おいしいストロベリータルトを作ったんだ』
自分の知る限り得意料理は麦茶だったはずなのに。そんな彼がいきなりストロベリータルト?まさか冗談だ。なんて思いつつも指定された場所に来てみた
そこは都会からかけ離れた田舎のようなおちついた場所
だが辺りには田んぼや竹林ばっか
家はあっても彼の指定した家ではない
さて、どうしたものか
ひゅるり、と強い風が体を抜けた
暖かく青の匂いのする春独特の風だ
そんな風に乗って片手にもっていた封筒が飛ばされた
あれは彼に必要だからと持たされたもので急いで追いかけた
すこし黄ばんだその封筒は嘲笑うようにひらひら宙を舞う
「待てよ、もう…」
いつの間にか足場の悪い竹林来ていた
そこはかすかに日を通し風が通る度にさらさらと笹が心地よく鳴る
背を見ると田んぼがみえた
来た道を確認して、あの封筒を探す
あの封筒はまるで自分を待っていたかのように笹に引っかかっており風によってまた舞いだした
「もう!」
そろそろ嫌になってきた
彼に連絡して封筒をなくしてしまったと言おうか迷った
だがなにを思ったかまた封筒を追って走り出した
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