ヴォローネのお願い

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その後も幾度となく流砂に足を取られながら広大な砂漠を歩き回った。しかし、ヴォローネの相方どころか人っ子一人見当たらない。 だいぶ奥まで進んだ後、ヴォローネと再び合流した。 「だいぶあちこち流されてたみたいだけど、パスタは見つかったワケ?」 「いいえ……。それどころか人一人いやしな」 「あ!?見つかってねぇ?だったら他のトコ探せよ!」 「ちょ……、苦しいです……!放して……!」 ヴォローネがエストに食ってかかる。いやいや、他を探せっていいながら食ってかからなくても……。 と、その時。 「うわああああっ!!」 女性の悲鳴が響いた。 「今の声、パスタの……!」 ヴォローネが声のした方へ走り出した。 「あっ!ヴォローネさん!?」 「エスト!動いちゃダメ!」 走り出したヴォローネをエストが引き止めようと後を追おうとしたが、カンナが制止した。一行はいつの間にかピンクグリズリーの群れに囲まれていた。 「!いつの間に!?」 「みんな!行くよ!」 カンナが剣を構え、それに合わせて全員武器を構えた。 相手は3体。魔物とはいえ、クマだ。そう苦労する相手ではないだろう。 「とおっ!」 カンナが気合いと共にクマの一体に切り掛かる。カンナの攻撃は的確に敵の急所をついた。 「なんだ、楽勝じゃんか。」 「油断しないでね!」 「おうよ!」 さすがにそこら辺にいる魔物に比べれば手強いが、この前の魔女の森の宝石-リビングジュエルなんかよりは全然余裕の相手だ。 しかし、砂漠の暑さの中、体力の消耗はいつもより遥かに早く進む。特に、すでに熱中症気味のシュラインは援護の歌魔法を唱えるのもままならない。 最初は順調に思われたが、状況は徐々に悪化していった。 「どっひゃ~!」 グリズリーが振り回した腕が予期せずエストを直撃した。エストも暑さでいつもほどの高度を維持できていなかった。そのまま地に落ちると、そこに別のグリズリーが襲い掛かった。 「させるか!」 ヴァズがエストの前に立ち、攻撃を武器で受け止めた。思うように力が入らず、若干押され気味だ。 「くっそー、暑くてだりぃや。余計暑くなっけど、これでもくらいやがれ!」 大きく息を吸い、炎にして出す。竜の血を引くバハムーンならではの攻撃ではあるが、正直暑さに拍車がかかる。グリズリーを退けるには多少効果を発揮したが。
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