始まりと妁眼蒼手の化物

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今から30年ほど前─── とある一室に、十数名の大人達が集まっていた。 部屋には机どころか何一つなく真っ暗な空間が広がる。 だが問題はない。彼らはその空間に大型プラズマテレビ画面ほどのモニターを円を描くよう映し出し、それぞれ違う場所からアクセスしているからだ。 「さて、会議を始めようか」 画面に映し出されたひとりの男の野太い声で会議の幕を開ける。 議題内容:『どうすれば犯罪はなくなるか』 まるで子供が思いつきで言ったような先の見えない議題に大人達は真面目に話し合う。 しかし今の世の中で犯罪は無くなる糸口さえ見えそうにない。 人には『幸せ者』と『不幸せ者』がいる。 『幸せ者』は誰に頼んだわけでもないのに物事がうまくいく。勉強にしろスポーツにしろ、彼らの知らないところで幸運は舞い込んでくる。 だが『不幸せ者』は違う。 彼らは何をやってもうまくいかない。まるで神様に嫌われているかのようにやることすべてが裏目に出る。何もしてなくても、ちょっとした事で不幸と感じてしまう。 例えそれが幸運な事でも気付かない。 『運』を持って生まれる者と持たずに生まれる者。 『不幸せな者』は『幸せ者』に嫉妬する。 そこから生まれる『負』の感情に人は抗えない。 『不幸せ者』がいなくなる事はない。 だから犯罪はなくならない。 長い話し合いの結果、こう結論づけられた。 【すべての人間を『不幸せ者』にすればいい】 この日をもって『道化計画(マリオネットプラン)』は始動した。
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