始まりと妁眼蒼手の化物

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今から三年前、三月二五日、午前三時頃のこと── 事件現場は道具から知識まで科学技術の髄と魔術の髄の両方が集まった日本の『発展都市』、その第七地区。 天侯は雨。それも土砂降り。 被害者はこの近くの小学校で教職に着いている初老の男。 容姿は残念ながらお世辞でもかっこいいとは言えない。日々のストレスのせいか中央部の髪が極端に薄くなっている。両側に残った白髪交じりの髪も数年後にはなくなってしまうだろうか。 頬骨の出た顔つき。シルバーフレームの老眼鏡を掛けている。全体的に細身……というかガリガリで、突風が吹けばあっさり飛ばされてしまいそうだと思うくらいひ弱な印象を抱かせる。 性格は誠実、かつ真面目。だが少年のような元気と面白さもあり、教育の現場でもそれが見受けられる。今では希少種になってしまった熱血教師だ。生徒達からもかなりの人気がある。 長年ともに助け合ってきた妻と、今年の春から高校生になった娘がおり、幸せな家庭を築いていた。 そんな彼がどんな被害にあったのかというと── 「早く財布出せよ、オイッ!」 「──ッぁ…」 二〇代にも満たないであろう少年数人による暴行・かつ上げ行為。 古い言い方をすると、おやじ狩りだ。
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