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ある山奥にある御屋敷――――
「今日も暇だねぇ……香澄」
僕の名前は鈴木 二郎。この屋敷の主人だ。趣味は大衆迎合。特技は影絵――特に太陽とか――。必殺技はナイフ投げ。
「チッ……それならこのアイスティーをお飲み下さいませ」
そしてエプロンドレスを身に纏うこの子は香澄。この屋敷のメイドだ。趣味は不明。特技も不明。必殺技も不明。舌打ちの理由は呼び捨て。
「おぉ、何だか美味しそうだ」
僕はティーカップを手に取りそれを口へ運ぶ。
と――。
「鈴木二郎!貴様を葬りに参上した!!」
偏った武士道を掲げてそうな見た目が服だけ武士な男が目の前に現れた。
玄関閉めてたのに不思議!!
「うるさい。死ね」
辛辣な言葉を浴びせた途端香澄さんは包丁を男に向けて躊躇いもなく放った。
一体何に使うつもりだったのだろう?
「ふっ!」
しかし見た目は確実に武士であろう男は包丁を見事な刀捌きを見せそれを弾いた。
が、
「なっ!?」
その一瞬とも言える間、既に彼女は男の間合いを深く深く踏み込んでいた。
――――――――
「そい…つどうす…んのさ?」
気絶した男を気にしつつ、自分の眩暈の原因についても考えてみる。
「樹海にでも棄てて来ます」
屋敷の周りは不気味な森で囲まれている。
「あ……そう……」
吐き気、けだるさ、身体の震えにより耐え切れず僕は地面に横たわった。どうやら毒が全身に巡ったようだ。
「生き…てたら……起こ……し……て…」
「そうならないことを切に願います」
メイド兼殺し屋の彼女は軽口を叩くかのようにそう言い放つ。
僕は、不死身なのだ。
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