すいせんのはな

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すいせんのはな 蕾なら、10日程もつらしい。 花が開き始めると、そう持たないので、 束にして安く売ってしまうそうだ。 五つをひとまとめ ゴムでくくって セロファンで包む。 しおれかけたものは、もう捨ててしまうから、と 何本か譲り受けた。 月明かりの下 水仙を携えて帰る。 ぽとり と 今にも頭が落ちてしまいそう。 腕の中で 力なく開ききった花びらを揺らす その姿は 自己愛 というより 謙虚 という言葉の方が、よく似合う。 ただ そんなに下ばかり、向いていたら 周りの景色はみえないだろうな。 ふとそう思った。 すいせんの香り 頷くようにそっと揺れた。
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