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この坊主いや娘は離れている時に、百鬼丸に死なれるのが怖いのだ。
自分が危険な眼にあうより、その場に居られない事の方が大事となるのだ。
百鬼丸もそれには気付いている。
だからこそ、置いて行くつもりなのだろう。
結局宥める事を諦めた百鬼丸は、犬の様に縄でどろろを縛ると縄のもう端を家の柱に結んだ。
その間に噛み跡や、たんこぶを何個もこさえる事にはなった。
だが、どろろと同じ様に百鬼丸もまた、この娘を大事に想うからこそ、この程度の事では縄を緩めるつもりはない。
「おいおい。あれで良いのかい? 気持ちに気付かない訳ではないだろう?」
じぃさんは心配そうに、尋ねる。
「良いんだよ。今生の別れでもなし」
はっはっはと笑いながら、百鬼丸は答えた。
後ろではどろろが、家ごと潰す勢いで暴れ狂うが、中々どうして柱はびくともしない。
「当分騒がしいとは思うが、勘弁してくれよじぃさん」
「まぁ仕方ないわなぁ。家が倒れる前に帰って来てくれよ」
「はっはっは。確かに! では行って来る」
そう言うと百鬼丸は、村を出て山の奥へと向かって行った。
取り残されたどろろは、この薄情者! と怨み言を言うしかないのであった。
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