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身体を取り戻した百鬼丸は、人の醜さに辟易し、世を捨てた。
だがそんな自分を、どろろは救ってくれたのだ。
幸せな村の生活を捨て、自分の元に来てくれた。
妖怪共を殺しまわった腕を買われ、今は化け物退治なんかを生業にして居るとは言え。
落ち着いたら、静かな場所で二人で根を張って暮らすのも悪くはないとさえ思えるのは、偏にどろろのおかげだろう。
そんな彼女を、今回巻き込みたくはない。
今回依頼された仕事はどうにもきな臭いのだ。
依頼主がどうも、公家の人間が絡んでいるようだったし。
下手をすれば一つの村を相手取り、戦わなければならないような危険な仕事だ。
これでは流石に、どろろを連れて行く訳には行かないだろう。
今から向かう場所の名は、山奥だと言うのに人魚に纏わる伝説が残る。
--川魚村--
人魚の生き血や、そういった不老不死の類いの話しが残る村だ。
どろろをふん縛った村から三日掛けて、川魚村に着くと百鬼丸は山伏として村に潜入した。
刀は村の近くの雑木林に埋めたので、短刀一本で身を守らなければならない。
「あんた、こんな辺鄙な村になんかようかい?」
村に入ると直ぐに、がたいの良い親父に声を掛けられる。
「某は、仏の道に嫌気がさし新たな教えを顧うためにこの村に来たのだが誰か詳しい者はおらぬか?」
親父は百鬼丸をじっと見つめると、着いてこいと村の奥へと案内した。
一際大きい屋敷に着くまで無言で歩く二人。
百鬼丸は内心、依頼が早く済みそうだと安心していた。
「村長に話しを聞けば良い」
と親父は無愛想に百鬼丸に言うと、さっさとどっか行ってしまった。
「どうしたのですか?」
屋敷の門の前で、どうするか思案していると門の内側から女子--オナゴ--の声が響いた。
「村の方にこちらの村長様の家に案内されたのですが、どちらかに行って仕舞われてどうしようか悩んでおりました」
「あら、あなたは旅のお方でしょうか?」
「さようでございます。仏の道を学んでおりましたが、風の噂で聞いたこちらの村の信仰に興味を持ち尋ねて参りました」
「それはそれは、こんな所迄わざわざお越し頂いて。ただ今村長様に確認しますのでお待ち下さいませ。」
「かたじけない。よろしくお願いします」
数分後、娘が戻って来て、門を開けたくれた。
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