生き血信仰

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門が開くと、先程の声の主だろう美しい娘が出迎えた。 「村長が待っておりますので、奥の座敷へとご案内します」 丁寧にお辞儀をすると、娘は百鬼丸を奥の座敷へ案内する。 娘からは桃の様な匂いが薫ってくる。 くらくらとする程の、甘い匂いだ。 もし近くにどろろが居たら、酷く顔をむくれさせるだろう。 座敷に上がり、襖を開けて貰うと、奥には好々爺と言える一人の爺が居た。 「山伏どの、これはこれは遠路遥々お越し下さりまして、何もお構いできませぬが、ごゆるりと足をお休めください」 「こちらこそ急にお邪魔してしまい申し訳ない」 「さて山伏どのは、我らが神の教えにご興味があるとか?」 「さようでございます。不老不死を得る素晴らしい教えをご配聴したく伺わして頂きました」 (まぁどうせインチキに決まってるだろうがな) 「とうとう我らの神も、仏の道を越えましたか。ほっほっほ。めでたいめでたい」 百鬼丸の気持ちとは裏腹に、村長の声色は増していく。 「して村長? どうやって不老不死を得るのですか?」 一瞬にして、村長の目付きが鋭くなる。 「山伏どの。物事には順序がございまする。先ずは我らが神に仕える巫女に挨拶をして頂けますか?」 「気が逸ってしまった。これは失礼」 と言って百鬼丸は頭を下げる。 それに対して、眼を細め、口元を緩めながら村長は答える。 「なんのなんの。頭をあげて下され、やはり不老不死ともなれば気が逸るのは致し方ない」 「申し訳ない。まだまだ某も修行が足りぬ様です」 そして二人は笑いあうのであった。 お互いに腹に一物を抱えて、タヌキとキツネの化かしあいをしているような雰囲気である。
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