《二話》嵐の前の静けさ

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「チョコちゃんって悩んでいてもだれにも相談しようとしないから、なにかあったらオレか梨奈に言うんだよ」 「あ……うん、ありがとう」  とは言うけど、今まで相談なんてしたことがないから、どうすればいいのか分からない。 「圭季も悩み事を言わないし、ほんっと二人してそういうところが似てるから、困るというか、わかりやすいというか」  と那津はつぶやいている。  あたしと圭季、似てるの? 全然似てないと思うんだけどなぁ。  話をしているうちに橘家にたどり着いたようだ。 那津は急に『執事スマイル』をして、あたしを車の外へと導く。  外に出ると、少し肌寒いけどさわやかな風。 春なんだな、と実感する。 「ほらほら、圭季のお母さんが今か今かと待ってるんだから、早く入って!」  那津にせかされて、あたしは久しぶりの橘家へ足を踏み入れたのだった。 【つづく】
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