《三話》赤い薔薇の花束

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「チョコちゃん、気をつけてね」  那津がマンションの入口まで送ってくれた。 去り際に心配そうな表情で那津はそんなことを言ってきた。 「大丈夫だよっ」  年下の那津に心配され、あたしは思わず強がった。 「困ったことがあったら、オレでもいいし、梨奈にでもいいから相談して」 「……うん」 「チョコちゃん、いい? 迷惑だなんて思わないで。 チョコちゃんがそうやって悩んでる方が、オレたちには迷惑だから」  那津のその言い方にかなりむっとしたけど、これは那津なりの思いやり。 そうとでも言わないとあたしが相談しないのを分かっているから、わざと言っているってのは分かった。 「それと、あんまり我慢をしないこと。 圭季は鈍感だから、言わないと分からないよ?」  鈍感って、それはいくらなんでも言い過ぎなんじゃない? 「それじゃ、おやすみっ」  那津は言いたいことだけ言うと、とっととリムジンまで帰って行った。  相変わらずだなぁと思ったけど、那津のそういう気配りにちょっとだけ涙が出た。 。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+  圭季はあたしが寝た後に帰ってきて、起きる前に出て行ったみたい。 一緒に暮らしているのにどれだけ顔を見てないのだろう。  圭季が作ってくれた朝食を食べて、あたしは学校へと向かう。  通学にもだいぶ慣れてきて、朱里と待ち合わせをしなくても行けるようになった。  なんだかあたし、すっごく情けなくない?  周りの人の手助けがないとなんにもできないなんて、こんなに情けなかったのかな。  ……落ち込んできた。  春休みに立てた目標を思い出すと、さらに憂鬱感に拍車をかけた。  『自立したオトナの女になる』  すでに働き始めた圭季の足を引っ張らないように、むしろ圭季を支えてあげるのよ! くらいの意気込みで掲げた目標は思ったよりもハードルが高かったのだろうか。  こんな時は気分転換にお菓子を作ればいいのよ!  授業も鬱々とした気分で受けていたので、その考えに久しぶりにわくわくすることが出来た。
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