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「チョコちゃん、気をつけてね」
那津がマンションの入口まで送ってくれた。
去り際に心配そうな表情で那津はそんなことを言ってきた。
「大丈夫だよっ」
年下の那津に心配され、あたしは思わず強がった。
「困ったことがあったら、オレでもいいし、梨奈にでもいいから相談して」
「……うん」
「チョコちゃん、いい? 迷惑だなんて思わないで。
チョコちゃんがそうやって悩んでる方が、オレたちには迷惑だから」
那津のその言い方にかなりむっとしたけど、これは那津なりの思いやり。
そうとでも言わないとあたしが相談しないのを分かっているから、わざと言っているってのは分かった。
「それと、あんまり我慢をしないこと。
圭季は鈍感だから、言わないと分からないよ?」
鈍感って、それはいくらなんでも言い過ぎなんじゃない?
「それじゃ、おやすみっ」
那津は言いたいことだけ言うと、とっととリムジンまで帰って行った。
相変わらずだなぁと思ったけど、那津のそういう気配りにちょっとだけ涙が出た。
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圭季はあたしが寝た後に帰ってきて、起きる前に出て行ったみたい。
一緒に暮らしているのにどれだけ顔を見てないのだろう。
圭季が作ってくれた朝食を食べて、あたしは学校へと向かう。
通学にもだいぶ慣れてきて、朱里と待ち合わせをしなくても行けるようになった。
なんだかあたし、すっごく情けなくない?
周りの人の手助けがないとなんにもできないなんて、こんなに情けなかったのかな。
……落ち込んできた。
春休みに立てた目標を思い出すと、さらに憂鬱感に拍車をかけた。
『自立したオトナの女になる』
すでに働き始めた圭季の足を引っ張らないように、むしろ圭季を支えてあげるのよ! くらいの意気込みで掲げた目標は思ったよりもハードルが高かったのだろうか。
こんな時は気分転換にお菓子を作ればいいのよ!
授業も鬱々とした気分で受けていたので、その考えに久しぶりにわくわくすることが出来た。
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