131人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっとその、それは無理なの」
「えー、ちょっとだけじゃない」
よく分からないけど、間宮さんはあたしにどうあってもサークルに来てほしいらしい。
あたし一人の問題ならともかく、圭季に話をして、それから……といつもと違う動きをするときは事前準備などが必要。
今日がちょうどその四時限目までの日に当たるから、この勢いだと無理矢理にでも連れて行かれてしまう。
それはとってもまずい。
間宮さんを納得させるにはなんと説明しようかと悩んでいたら、いつも困っているあたしをフォローしてくれる深見さんが口を開いた。
「間宮、都は嫌がってる」
「そんなことないわよ! 都さん、来てくれるよね?」
間宮さんのごり押しにあたしは負けずに首を振った。
「ごめんね、授業が終わったらすぐに帰らないといけないの」
あたしの返事に間宮さんは不機嫌な表情になった。
あたしだって断りたくない。
他の子たちと同じように遊びたい。
それができないのは圭季とつき合っているから。
薫子さんが今、どこにいるのかは分からないけど、彼女は手段を選ばずにあたしを亡き者にしようとしている。
そんなことしたってほしいものは手に入らないのに。
薫子さんの中には諦めるという言葉はどうやらないらしい。
理不尽だって思う。
こんな辛い思いをしてまで圭季とつき合うなんてと思わないでもない。
だけどあたしには圭季しかいない。
圭季の温もりを知ってしまったから、離れられない。
それに圭季はあたしを必要としてくれている。
だったら好きな人のために我慢しようって思う。
「都はお嬢だから」
深見さんの言葉に水を吹き出しそうになった。
危ない、危ない。
「なっ……! 違うわよっ!」
あたしの否定の言葉に深見さんは小さくうなずいただけだった。
真意が分からなくて小さく首を傾げた。
「間宮はとにかく、それをきちんと食べろ」
いつものセリフにあたしは苦笑しつつ、深見さんをじっと見た。
すると深見さんはあたしにだけ聞こえるくらいの音量でぼそりと呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!