《四十九話》新しい友だち

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「毎日、お迎えが来てるだろ」  来てるけど。  もしかしてそれがあたしがお嬢さまだという根拠? 「最近は見ないけど、前は高校の制服を着た男の子が迎えに来てた」  那津のこと……?  那津は目立っていたけど、あたしは地味だから目立ってないと思っていたのに。 深見さん、侮れないわ。 「……見てた?」 「見てた。都と友だちになりたくて、きっかけを掴むためにずっと」 「へっ?」 「都からは甘くて美味しそうな匂いがしていたから、絶対に友だちになると決めていたんだ」  え……っと。  確かに深見さんとは気がついたら一緒にいて、話をしたりお昼を食べたりしていたけど。  深見さんとの出会いってなんだったかな。  しばらく悩んで、思い出した。 朱里と都合がつかなくてカフェテラスの片隅で一人で食べていたとき、深見さんから声を掛けてきたんだった。 『わたしも一人だから一緒に食べてもいいか』って。  激しく戸惑ったけど、断る理由もなかったから小さくうなずいたら隣に座ってきた。  あの時もだけど、今も隣にいた。 間宮さんはあたしの正面に座っている。 「食器を戻してくる」  と間宮さんは空の食器を片付けにいった。 その隙にと深見さんは質問をしてきた。 「都はお菓子は好きか?」 「うん、大好きだよ?」 「自分で作るほどお菓子が好きと」  あたしはその問いに対してうなずくだけにした。 「それなら明日、作ったのを食べさせてほしい」  深見さんの唐突な申し出に、瞬きをした。 作って持ってくるのはいいけど……? 「アルバイトのない日は帰ってお菓子を作っているから予定は空いていないと言えばいい」 「あ……」  まさしくそうなんだけど、どうして深見さんはそのことを知っているのだろうか。 「……当たり?」 「うん、そう。どうして分かったの?」  不思議に思って聞くと、四時限目の次の日は甘い匂いが濃厚なんだとか。 よく分からないけどものすごく嗅覚がいいらしい。
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