131人が本棚に入れています
本棚に追加
「それでっ」
食べ終わり食器も片づけてきた間宮さんが戻って来るなり嬉々として聞いてきた。
「来てねっ!」
それだけ言うと荷物を持って去っていこうとしたからあたしは慌てて口を開いた。
「授業が終わったら、家に帰ってお菓子を作ることにしてるのっ」
「……そんなの、今日じゃなくても」
予想通りの返答にどう切り返そうかと悩んでいたら、深見さんがまたフォローを入れてくれた。
「間宮、悪いがわたしの方が先約だ」
「えーっ」
「それに、都のお菓子はプロ並みらしいぞ」
それは言い過ぎと思ったから否定しようとしたら、間宮さんは目をきらきらとさせてあたしを見た。
「ほんとっ? ダイエットしていて甘いの控えてるんだけど、ダイエット中でも食べられるお菓子ってある?」
ずいぶんの難しいことを言ってくれているけど、間宮さん分も作ってくると言えばサークル活動を見に行かなくて済むのならと必死に考えた。
「それは……難しいけど、カロリーを考えてなにかお菓子を作ってくるね」
「じゃあ、明日ね!」
間宮さんはそれだけ言うと慌ただしく去っていった。
明日、ということはあたしはどうやら見学に行かなくて済んだらしい。
「深見さん、ありがとう」
彼女のおかげだからとお礼を言うと、
「お礼にはおよばない。とびっきり美味しいお菓子を頼む」
というからあたしは笑顔で答えた。
「うん、分かった」
あたしは二人分のお菓子を作ることになった。
【つづく】
最初のコメントを投稿しよう!