《五十三話》トンデモな結末

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「薫子、オレと結婚しよう!」  その声とともにタキシードを着込んだヘンタイ椿が現れた。  ……やっぱりヘンタイだ。  空気を読め。  警備の人たちもどう対処すればいいのか分からないようだ。 空気のざわつきで動揺を感じ取った。  分かるわ。  どうすればいいのか分からないっていう気持ち、よく分かる。  ヘンタイ椿の出方が分からないから、あたしたちは様子見をすることにした。  ヘンタイ椿がちらりとこちらに視線を向けてきた。  薫子さんとは違って、こちらはいたって平常運転のようだ。  圭季が身体を動かしたから、ヘンタイ椿が隠れてしまった。 見たくはないけど、この先の展開が気になるから隠さないでほしい。 「薫子、あのチョコレートケーキセットにちょっかいを出すのは止めよう」  ……チョコレートケーキセットってなに、それ? 「ケーキには薫りよりも味だろ? チョコレートには勝てないよ」  えっ……と。  それって、あたしたちのこと?  なんだか激しく馬鹿にされているような気がするのですが! 「それに」  ヘンタイ椿は赤い薔薇の花束を抱えたまま薫子さんの目の前に立った。 薫子さんはヘンタイ椿の背中にすっぽりと隠された。 「オレたちは従姉弟だし、似た者同士でくっつくのが一番じゃないか?」  薫子さんも確かに変わってると思うけど、ヘンタイまではいってなかったと思う。  どこが似てるんだろうと悩んでいると、ヘンタイ椿が動いた。  真っ赤な薔薇の花束ごと、薫子さんの身体を抱きしめたかと思ったら。 「…………!」  身体を少しずらして顔がこちらに見えるようにしたかと思ったら、ヘンタイ椿は薫子さんの顔に近づけた。  え……あ、ちょ、ちょっと?  しかも念入りに逃げられないようにと薫子さんの顎を掴み、そのままぶちゅーっと。  ……ぶちゅー?  口づける、というよりは唇ごと食べるといった表現が正しいような……えーっと、キス? をした。  さすがヘンタイと言われるだけの行動ですね。
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