《五十三話》トンデモな結末

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 あまりのことに乾いた笑いをしようかと思ったけど、周りの空気が凍り付いることに気がついた。  これは……。 ど、どうすればいいのかしら?  見ていられなくて、あたしは慌てて二人から視線を逸らした。 モザイクをかけてほしいレベルだわ。  そんな二人の恥ずかしい行為から顔を背けて圭季を見ると、じっとあたしを見つめていた。  あの二人を見ていなかったことにほっとしたけど、なんだかその視線がとても熱っぽくて危険な感じ。  ひきつった笑みを返すと、圭季の顔が耳の横へとやってきた。 そして囁くように口にした言葉に驚愕した。 「チョコの唇もあんな風に食べていいか?」  大声で怒鳴り返したいのを耐えて、あたしは小さな声で言い返した。 「いっ、いいわけないでしょうっ!」  なにを言ってるの、この人はっ!  それよりしっかり見ていたのね?  ……あたしも見ていたから人のことは言えないけど。  薫子さんはようやく自分の身になにが起こっているのか把握したようで、ヘンタイ椿の腕の中で暴れ始めた。 意外に反応が遅かったわよね。  だけどいくら薫子さんが暴れても、腕も口も離す様子のないヘンタイ椿。 恐ろしいわ。  薫子さんは威勢良く暴れていたけど、どんどんと力が弱くなり、最後はくたりと今にも崩れ落ちそうになっていた。  そこでようやく唇が離されたようだった。 薫子さんは大きく肩で息をしていた。 「こ……んのっ、馬鹿っ!」  息が落ち着いたらしく、薫子さんは顔を真っ赤にしてヘンタイ椿に怒りをぶつけていた。 「ファーストキスは結婚相手に捧げるんだよな? 大好きなケーキにあげるから取ってると言っていたけど、オレがありがたくもらったから、結婚しような?」  なんかすごいことを聞いたような気が。
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