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圭季に腕を引かれ、現場(現場としか言えない状態だったから、つい)から立ち去ろうとしたらヘンタイ椿が口を開いた。
「……あんときは悪かったな。これでちゃらにしてくれよ」
……あんとき?
どのことだろうか。
心当たりがありすぎて特定できませんが。
「おれたちの前に二度と再び姿を見せるな」
圭季にはどのことか通じているらしいから、あたしとのことではないようだ。
「そういう約束だから、守る。今日は約束を破って悪かった」
約束?
あたしが知らない間に話し合いの場をもうけたのかしら? それとも一連の話し合いの中でのこと?
薫子さんとはあたしの前に姿を現さないだとか、人を使って妨害しないことだとかっていう取り決めはあったみたいだけど合意にはいたっていなかった。
だからこその厳戒態勢が何年も続いたわけで。
「ま、そーいうわけでっ。薫子、これから結婚式だ、やっふー!」
結婚式……? 本気ですか?
薫子さんに視線を向けると諦めたような表情でヘンタイ椿を見ていた。
「あんただけはお断りだったんだけど、純潔を奪われたのなら仕方がないわね」
じゅ……純潔って。
キスされたくらいで大げさな。
薫子さんの基準が分からないよ!
「それじゃあ、圭季。もうあなたには会わない。チョコレートまみれになればいいんだわ!」
チョコレートまみれって。
「あんたたちより幸せになってやるんだからっ! 俊平、わたくしを不幸にしたらどうなるか分かっているわよね?」
「分かってますよ……っと」
「きゃっ」
ヘンタイ椿は薫子さんをお姫様抱っこすると周りの目をはばからずいちゃいちゃ始めてしまった。
なんだか胸焼けが。
げっそりしつつ、あたしたちはそっと離れた。
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