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そんなことを思っていると、圭季があたしに近寄り左手の指先を絡め取った。
あたしたちだけではないのに、圭季が遠慮なく熱い視線を向けてくるから全身が熱くなってきた。
今のあたしは真っ赤になっていると思う。
恥ずかしいから目をそらしたいのに、圭季が次になにをするのかも分からなくてそらせない。
緊張でがちがちになっている圭季はぎこちない動きであたしの指を両手で握りしめた。
そして咳払いすると口を開いた。
「都千代子さん。
改めて結婚を申し込みます」
け……結婚?
えっと……。
なっ、なんで今っ?
圭季に指を握られたまま、あたしは周りの反応をうかがった。
父が視界に入り……って、なんで泣いてるのっ?
「とうとう結婚か……。
うう、母さん、チョコはすばらしい結婚相手に巡り会えたよ」
そこで母への報告をしなくていいですっ!
答えをくれそうな綾子さんと和明さんを見たけど、二人は手を取り合って微笑んでいた。
……夫婦仲がよいのはいいことなんですけどね。
…………。
圭季に視線を戻すと穴が空きそうなくらい見られていた。
エアインのチョコレートは美味しいけど、あたしが穴あきになっても困るだけですから!
「チョコ……?」
不安そうな声に返事をしていなかったことに気がついた。
……あたしが圭季のプロポーズに同意すれば。
すれば、ですよ。
結納だのなんだのといったことを考えたらすぐに結婚ってことはできないけど、一時的にマンションに帰らないといけないかもだけど。
結婚すれば大手を振って圭季と一緒に住むことが出来るっ?
それって願ったり叶ったりじゃない!
あたしは圭季の瞳をじっと見つめて口を開いた。
【つづく】
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