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「ありがとうございます。すごくうれしい」
デザインはとても好みだったから素直にお礼を伝えた。
あたしの反応を見て、綾子さんはにやりと笑った。
それを見て嫌な予感に無意識のうちに身体が後退していた。
この笑顔、何度も見たことがある。
逃げないと大変な目に……って!
「わあああっ!」
「チョコちゃん?」
逃げようとしたらがっしりと腕を捕まれてしまった。
きゃあああ!
「和明さん、準備はできているかしら?」
「大丈夫だよ」
「それなら」
綾子さんは麗しい笑顔をあたしに向けてきた。
「お着物に着替えましょうか」
えっ? あたし、疲れてるから部屋に戻って休みた……ぎゃああ!
綾子さんは容赦なくあたしを引っ張って応接間から出てしまった。
圭季に助けてと視線を向けたけど、にこやかに手を振られただけだった。
。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+
部屋を移動すると、顔なじみのメイクさんも待機していた。
これからなにがっ!
鏡の前に座らされ、髪のセットから始まり、それは見事な流れ作業。
メイクもきっちり施され、振り袖を着付けられてしまった。
これって一体。
わけが分からないままされるがままになっていると、綾子さんに手を引かれて連れてこられたのは滅多に入ることのない和室。
床の間にはとてもめでたそうな掛け軸と赤い毛せんの上には赤と白の和紙に包まれたなにかが整然と並べてあった。
これってもしかして……?
「めでたい日にはさらに重ねてめでたいことをしましょうか」
綾子さんが仕切ってあれよあれよと結納が執り行われてしまった。
……やることが早いというか、急すぎてついていけない。
「入籍と式の日取りはまた改めましょうか。入籍は今からでも構いませんけど?」
ちらりとあたしと圭季に視線を向けられた。
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