《五十五話》あたしはとっても幸せです!

4/5

130人が本棚に入れています
本棚に追加
/297ページ
 にゅ、にゅーせきって! 「え……っと、なんかそれってとっても急すぎてっ」 「そう? 授かったから慌てて籍を入れましたなんてことにはならない?」 「んなっ……!」  なっ、なんてことをっ!  動揺しているあたしをフォローするように圭季はあたしの肩を抱きながら綾子さんに自分の考えを述べた。 「式と同じ日に入籍にするよ」  その方が記念日を忘れないだろ? と圭季が妙に甘い顔で囁くのであたしはさらに赤くなった。 「そうね。 式をする日はよい日取りにするから、その方が幸先いいわね」  と納得してくれたので助かった。 「それでは、具体的な日取りを」  と綾子さんは和明さんと父を連れて部屋から出ていった。  途端にあたしは疲れを自覚した。 だけどまだ気を抜いたら駄目だとがんばったけど、身体に力が入らない。 「疲れたよな」  圭季はあたしのことはお見通しみたいで手を貸してくれたおかげでどうにか立ち上がれた。 「部屋に戻って休んでいていいよ」 「でも……っ!」 「結納の準備はしていたけど、本当は今日の予定ではなかったんだ。 急で悪かったな」  申し訳なさそうな圭季にあたしは慌てて首を振った。 「日程だけはあちらに任せるとして、会場はチョコに決めさせるようにしておくから」  あたしと圭季の結婚式だけど、お仕事関係の人たちも招待しないといけないから調整した上での日程を組まないといけないのよね。  なんだか大事になってきたような気がするけど、今日は疲れているから考えないことにしよう。  圭季に促されるままあたしは自室に戻った。 「それじゃあ、また後で」  圭季はそう言うと軽くキスをして去っていった。  左手で唇に触れると、慣れない重さにどきりとした。  婚約指輪、もらったんだ。  なんだかとっても面はゆい。  右手で指輪にそっと触れて、あたしは部屋へ入った。  振り袖を脱いでハンガーに掛けて、部屋着に着替えた。  結ってもらった髪をほどき、メイクも落とすとどっと疲れが。  もぞもぞとベッドに潜り込んで、あたしは眠りに就いた。
/297ページ

最初のコメントを投稿しよう!

130人が本棚に入れています
本棚に追加