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そう、家を出たまでは良かったのよ。
学校へ行くためには電車に乗らないといけない。
推薦入試の時にも乗ったし、きちんと下調べもした。
しかし、現実はそんなに甘くなかった。
「……なんでこんなに混んでいるの?」
駅に到着して、嫌な予感はしたのよ。
普段、公共機関を利用しないあたしは知らなかったのだ。
通勤・通学時間の乗り物がこんなに混雑するなんて。
人でごった返す改札をどうにか通り抜け、ようやくの思いでホームに行くと、すごい人。
なんでこんなに人が? と驚くほどいた。
そして到着した電車の中を見て、腰が引けた。
なに、この人の多さ! 乗れるの?
電車が到着して扉が開き、どっと人があふれ出てきた。
その波に飲み込まれ、気がついたら改札に逆戻り。
あたし……大学までたどり着けるのかな。
改札の横で少し涙が出そうになっていたら、見知らぬ男が声をかけてきた。
「大丈夫? もしかして、聖マドレーヌ大学の人?」
目の前に立つ男の人は、心配そうにあたしの顔をのぞきこんでいる。
男の人、ということであたしの身体は硬直した。
忘れていた。
男の人がすごく苦手だったことを。
最近では圭季と那津で慣れたと思っていたけど、基本的には中学・高校と女子校で、男の人には免疫がない。
しかも小さい頃の出来事のせいで、男の人は苦手なのだ。
見知らぬ男の人にいきなり近寄られ、さらには顔をのぞきこまれて、蛇に睨まれた蛙状態。
怖い……!
恐怖に心が支配され、頭は真っ白になる。
「ほら、急がないと遅れるよ」
目の前の男はいきなりあたしの腕をつかむと、引っ張った。
「いっ、いやあああ!」
手に持っていたかばんを振りまわし、気がついたら男の頭を盛大に殴っていた。
「ごっ、ごめんなさいっ!」
男がひるんだ隙にあたしはそれだけ叫び、ホームへと駆け上った。
そして目の前に止まっている電車へと飛び乗った。
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