《一話》大学生になりました!

5/9

130人が本棚に入れています
本棚に追加
/297ページ
。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+  そう、家を出たまでは良かったのよ。  学校へ行くためには電車に乗らないといけない。 推薦入試の時にも乗ったし、きちんと下調べもした。 しかし、現実はそんなに甘くなかった。 「……なんでこんなに混んでいるの?」  駅に到着して、嫌な予感はしたのよ。  普段、公共機関を利用しないあたしは知らなかったのだ。 通勤・通学時間の乗り物がこんなに混雑するなんて。  人でごった返す改札をどうにか通り抜け、ようやくの思いでホームに行くと、すごい人。 なんでこんなに人が? と驚くほどいた。  そして到着した電車の中を見て、腰が引けた。 なに、この人の多さ! 乗れるの?  電車が到着して扉が開き、どっと人があふれ出てきた。 その波に飲み込まれ、気がついたら改札に逆戻り。  あたし……大学までたどり着けるのかな。  改札の横で少し涙が出そうになっていたら、見知らぬ男が声をかけてきた。 「大丈夫? もしかして、聖マドレーヌ大学の人?」  目の前に立つ男の人は、心配そうにあたしの顔をのぞきこんでいる。 男の人、ということであたしの身体は硬直した。  忘れていた。 男の人がすごく苦手だったことを。  最近では圭季と那津で慣れたと思っていたけど、基本的には中学・高校と女子校で、男の人には免疫がない。 しかも小さい頃の出来事のせいで、男の人は苦手なのだ。  見知らぬ男の人にいきなり近寄られ、さらには顔をのぞきこまれて、蛇に睨まれた蛙状態。  怖い……!  恐怖に心が支配され、頭は真っ白になる。 「ほら、急がないと遅れるよ」  目の前の男はいきなりあたしの腕をつかむと、引っ張った。 「いっ、いやあああ!」  手に持っていたかばんを振りまわし、気がついたら男の頭を盛大に殴っていた。 「ごっ、ごめんなさいっ!」  男がひるんだ隙にあたしはそれだけ叫び、ホームへと駆け上った。 そして目の前に止まっている電車へと飛び乗った。
/297ページ

最初のコメントを投稿しよう!

130人が本棚に入れています
本棚に追加