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ようやく駅につくと、当たり前だけどがらんとしていた。
うなだれて大学へと向かい、入学式が行われているらしい講堂へと向かったけれど、これだけ遅刻をしたから中には入れない。
遠巻きに眺め、人が出てきたらそのまま紛れ込もう。
自分のドジっぷりにため息を吐いてうつむくと、朱里と一緒に買いに行ったグレイのスーツが目に入った。
大学は私服ということで、なにをどう着ていけばいいのか分からなくて朱里に相談したら、一緒に買いに行こうと言ってくれた。
このスーツと一緒に私服も何点か買い、買い足すときのアドバイスももらった。
買い物をしながら朱里に、
『チョコはおっちょこちょいだから、入学式、一緒に出ようか』
と学部が違うけど同じ大学の朱里がそう言ってくれたのを今さらになって思い出した。
そのときは、一人で大丈夫、と強がって別々に行くことにしたんだけど……。
ようやく朱里が心配していることに気がついた。
きっと朱里のことだから、あたしがきちんと大学に来ているかどうか心配していっぱい電話とメールを送ってきてる!
あわててかばんを開けて中から携帯電話を探し出すと、予想通り、朱里から山のような着信とメール。
メールを見ると、
『チョコのことだから、間違って反対側に乗って気が付いてないんだと思う。
大学についたら、とにかくメールをちょうだい』
と入っていた。
図星すぎて、落ち込んだ。
さすが付き合いが長いだけあって、行動を思いっきり読まれている。
こんなに心配をかけるんだったら、強がらなければよかった。
と思っても後の祭り。
あわててメールを作成して、送った。
あたしもいつまでも朱里に心配をかけさせてばかりじゃいけない。
同じ大学とはいえ、学部が違うわけだし、そしてなによりも早く自立して圭季につりあう人にならないといけないのに。
朱里だって安心して彼氏の一人や二人、作れないよね、あたしがこんなだったら。
それもだけど、朱里に愛想をつかされてしまいそうでそちらの方が怖かった。
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