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絶望に打ちひしがれていた彼を我に戻したのは、鳥が飛び立つ音だった。
彼は音のした方を向いた。
そこには黒い制服姿の少年が立っていた。
腰には鞘に納まった剣を提げ。
その少年はしばらく彼を見てほうけていたが、我に帰ると彼に駆け寄った。
少年が近づいた事でようやく、蝶は彼の頭から離れる。
しかし、蝶は彼の頭上を舞っていた。
まるで美しい彼を惜しむかのように。
それから少年は片膝を突き、こう言った。
「おいっ、アンタ大丈夫か?」
大丈夫……?
彼は自分の体を見える範囲で隅々まで見回した。
記憶を失ってしまったが体は大丈夫そうだ。
そう判断した彼は少年に大丈夫、とだけ告げた。
「そうか……。アンタどっから来たんだ?」
「……分からない」
彼は首を横に振りながら答えた。
少年は顔を歪めた。
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