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「この間の土下座なんて、どうしろと言うのよ」
え? あれってそんなに困るもの?
「あれは土下座するしかないだろう」
「おかしいでしょう? 別に睦貴が悪いわけじゃないんだから」
なんだか文緒に説教されているのが俺、気持ちがいい。
ああ、もっと言葉でいたぶって!
思わずうっとりして文緒を見つめたら、なんだか汚いものでも見るかのような表情で俺を見ている。
「睦貴、なんか変なこと考えてるでしょう?」
な、なんでばれたんだ?
「そういうところがねぇ……」
やばい、今すぐここで抱きしめて押し倒したい!
ううう、奴らはブラックホールに吸い込まれてくれなかったのかよ!?
欲望と下心が今日はジェンカを踊りながら近づいてくる。頼むから来るな!
俺は頭を抱えてしゃがみこむ。
「睦貴? 気分でも悪い?」
急にしゃがみこんだ俺を心配して、文緒が駆け寄ってきてくれた。
ふわり、と文緒のいいにおいがして、ジェンカのスピードが百倍くらい速くなった。
もう……勘弁して。
「いや。大丈夫」
本当はまったく大丈夫じゃない、我慢の限界だ。
ものすごい泣きごと言いたい。
文緒を抱いてひとつになりたいんだああああ!
……おっさん、と言うな。
結局俺は『我慢する』という選択肢しか選べなかった。
ヘタレはどこまで行ってもヘタレでしかないのだ。
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