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「明日のパーティ、おまえも出席な」
普段はパーティなんて面倒だといって出席しない兄貴が朝の車の中でいきなり言うものだから、俺はびっくりして思わずブレーキを踏んでしまった。
「は?」
隣に座る兄貴を思わず凝視する。
「断わり切れなかったんだよ」
あの兄貴が断わり切れない相手、となると片手で数えるくらいしかいない。
アクセルを踏みなおし、俺は運転しながら思い出す。
ああ、そうか。
「深町さんのパーティか」
就任披露パーティをする、という話を聞いたような気がする。
「深町の馬鹿の就任披露だからな。断るにも断れないだろう」
まぁねぇ……。
「出席します」という返事のはがきを出したことを思い出した。
言われるまで忘れているなんて、秘書失格だな。
これからは二・三日後のスケジュールも気にした方がいいかもしれない。
会社に着き、兄貴に今日のスケジュールを伝える。
今日は比較的楽な日だ。
明日着ていく服がないことに気がつき、俺は兄貴に外出許可を取り付け、出かける。
ショッピングモールにひとりでくるのはさみしいな。
前もって分かっていたら土曜日か日曜日に文緒と来て一緒に選んだのに、と考えるから余計に男ひとりはさみしく感じるのかもしれない。
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