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「あのっ!」
ボーっと歩いていたら急に声をかけられ、俺は驚いて振り返る。
「い、いきなりですが! つ、付き合ってください!」
はい? というか、どちらさま?
俺はびっくりしてその声をかけてきた女の子を上から下まで眺めた。
そういえば最近すっかり忘れていたけど、たまーにあったな、こういうこと。
学生時代も見知らぬ女の子にいきなり告白されたこともあった。
どうせ『高屋』の名前にひかれて声をかけてきたんだろう、と冷めた目で見ていて、だけど来るものはみんなウエルカム状態で付き合ってきたな。
……付き合ってきた、と言えば聞こえはいいけど、ようするにまあ、欲望の処理をする対象としてしか見てなかった。
……俺って今思えば、男としても最低最悪だな。
そりゃあ文緒を前にして我慢できないのも仕方がない。
これは俺のゆるい下半身への修業だ。
「俺、彼女いるから」
回れ右をして手をひらひら振ってその場を後にした。
最近の若い子は積極的でいかん。
おっさんがここはひとつ説教でもしてやる!
……ってもう目の前にいなかった。
ちょっと前の俺だったらそう声をかけられたらほいほいとふたつ返事でOKして、そのままラブホテルにゴー! とか平気でしていた。
よく俺、今まで刺されるとかしないで済んだよな。
明日着ていくものは適当な店に入って適当に決めて購入した。
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