馬鹿は死んでも治らない!?

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 兄貴が見たら怒りそうだ、と思いながら無難なものを選択したつもり。  タキシード。  だけど少し生地が変わっていて、黒地に水玉を織り込んだような変わった織の生地。  中のベストはシックな赤で少しおしゃれ感を出してみた。  男は楽しくないよな、選択肢がタキシードに黒の蝶ネクタイ、なんて。 「帰ったら着て見せて」  男の服なんて見たって面白くないだろう。  文緒はたまに不思議なことをおっしゃる。  帰って着て見せると、文緒はものすごいはしゃいでいた。 「写真撮らせて!」  携帯のカメラでばしばし撮られた。  まさかそれ、学校で見せないよな? 「なんでー? 私の彼氏、って」  そんなことしなくてよろしい! 「カッコいいでしょ、って自慢するの!」  いや俺、かっこよくないから。  これだけ周りにいい男に囲まれていながら、文緒の美意識を疑うよ。  自分の見た目がコンプレックスなだけに、文緒に手離しに「カッコいい」と言われても正直、あまりうれしくない。  しかし、社長就任式って言うだけあってドレスコードを指定してくるってすごいよな。  いや、これは普通なのか?  どうにもそういう常識ってやつに疎くていかん。  普段より早く帰ってこれたので、久しぶりに食堂で食事をすることができた。  兄貴も早く帰ってきていたので一応今日買った服を確認してもらった。  特に文句を言われなかったからたぶんあれでいいんだろう。 「ネクタイはアスコットタイでもいいかもしれない」  と謎の言葉を残して兄貴は部屋を出て行った。  ……アスコットタイってなんですか?  グーグル先生、俺に教えて! 「ぽちっとな、と」  このネタ、読者の何人がついてこれるんだ? という古いネタを口にしつつ、あ、今リメイクやってるんだっけ?  調べた。  おお、このネクタイ、かっこいいな。  そう言えば、店員もそんなことを言っていたような気がする。  だけどまあ、初めてのパーティ、略してはじパー……頭悪そうだ……だから、無難な恰好が一番だ。
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