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俺は今、蓮さんになぜか説教されている、文緒と一緒に。
「文緒、ちょっと今回の試験の結果はひどすぎないか?」
文緒は蓮さんの言葉にさっきからずっとうなだれている。
その責任は俺にかなりあるのが分かっているから、文緒に申し訳なくて顔向けできない。
「睦貴も……分かっているよな?」
「はい」
俺は土下座して蓮さんに謝る。
「俺が責任もって勉強を教えます!」
「……勉強だけ、な」
そのとげのある言葉に俺はさらに縮こまる。
「期末テストで学年十位以内に入らなかったら、おまえらの付き合いは認めないからな」
ひいいい、ご勘弁をっ!
「分かった」
先ほどまでうなだれていた文緒は少し挑戦的な視線を蓮さんに向ける。
「その代わり、冬休みに睦貴とふたりで泊まりがけで出かけるの、許してよ」
文緒さま、お願いですからそんなことを俺がいる前で蓮さんに言わないでっ!
しばしの沈黙の後、蓮さんは深いため息とともにものすごく嫌そうに口を開いた。
「……十位以内に入れたらな」
厳しいけど、結局は文緒のお願いに甘い蓮さん。
文緒はにへら、と満面の笑みを浮かべて蓮さんに抱きついてその頬に軽くキスをする。
「蓮、ありがとう!」
蓮さんの顔を見なくてもどんな表情をしているのか、俺は知っている。
「仕事の時にいびる理由がこれでできたな」
と少し楽しそうな声が聞こえたけど、俺は聞かなかった振りをした。
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