馬鹿は死んでも治らない!?

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 教室をちらちら見ながら文緒を探す。  どこの教室もそれなりに人が残っていた。  だけどどの顔を見ても皆、試験が終わった解放感にあふれた表情をしていた。  ようやく文緒の教室を見つけた。  ひょい、と中をのぞいたけど、ここの教室内にはだれもいなかった。  あっれー?  黒板を見ると「佳山」と書かれていて、確かに今日、日直ということは分かったのだが。  日直のノートを職員室にでも持って行ってるのかな?  教室内を見回すと、ひとつだけかばんが残っていた。  あの見覚えのあるアクセサリは、文緒のかばんだな。  俺は中に入り、文緒の席に座ってみる。  おー、この感じ、なんか懐かしい。  ふと机の中に手を突っ込んで中を出してみる。  思ったよりはきれいに整えられていて、少し安心した。  中に入っていた教科書類を戻そうとした時、ふと一番上に紙きれを見つけ、俺はそれをつまみあげた。  ……なんだ?  文緒に悪いな、と思いつつも……なんだか胸騒ぎがして二つ折りにされたその紙を広げてみた。  本日の放課後、屋上で待っています、だって?  まさか文緒、この呼び出しに応えて行っているのか?  俺はその紙をぐしゃり、と握りしめ、文緒のかばんを掴むと屋上に向かって走り出した。  なんだか嫌な予感がする。  なかなか帰ってこない文緒。  兄貴が珍しく迎えに行って来い、と言ったこと。  ノリちゃんの少し困ったような表情。  この学校は共学だから普通に考えて告白するために文緒を屋上に呼んだかもしれないじゃないか。  いや、それでもその呼び出しに素直に答える文緒もどうかと思うぞ。  俺と言う彼氏がいながら。  ……だけどまあ、常に自信がないのは確かだ。  文緒が俺のことを好きでいてくれているのは分かっている。  だけどやっぱり、身近に若い男がいればそちらにふらり、と行ってしまうことだってあるかもしれない。  俺は文緒一筋だけど、文緒はまだ若い。  若気の至りってやつで甘い誘惑に誘われて行ってしまうかもしれないじゃないか。  ……いや、文緒に関してはそれはなさそうだな。
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