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だけど……。
この夏に起こったひとつの事件のことを俺は思い出していた。
──柊哉との未遂事件。
俺は気にしないようにしていたけど……やっぱりあれは、自分が思っていた以上に深く傷を残しているようだ。
柊哉には残念ながら未遂だったとはいえ、文緒がふらりとついていった、という事実は変わりがない。
俺がさみしい思いをさせていたせい、というのもあってあまり強く言えなかったけど。
今みたいにふとした拍子にそのことを思い出し、俺をさいなむ。
過去のことを悔んだって仕方がないのにな。
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