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俺の名前は高屋睦貴(たかや むつき)、年齢は三十二歳。
少し前までヘタレでニートな獣医をしていたのだが、諸事情があって今では兄である高屋秋孝(たかや あきたか)の秘書をしている。
前まで深町(ふかまち)さんが兄貴の秘書をしていたんだけど、悪の総本山の真理(しんり)が亡くなり、子どものいなかった真理の代わりに深町さんが辰己(たつみ)の家を継ぐことになり、長年勤めていた兄貴の秘書を辞めた。
結局、真理は深町さんを手に入れた、ということになるのかな。
真理が亡くなったことで少し俺たちの関係が変わったことに、真理がどれだけすごかった人か……改めて知った。
俺は獣医の仕事を本格的にしようかと思った矢先。
「睦貴、おまえは明日から俺の秘書」
と命令され、俺の意見なんてなくて、にわかに秘書にされてしまった。
おいおい、俺、自慢じゃないけど全然分からないぞ?
高屋の家に生まれた時からいるんだから人間関係だとか会社関係は分かるだろう、と言われたけど……。
ヘタレでニートな俺に急にそんなものを求めるなよ!
急激な環境の変化にくたくたになりつつ、それでもつきあい始めたばかりの文緒との時間もほしくて……。
俺は文緒の学業のことまで気が回らず……こういう結果を生み出してしまった。
我ながら大人げない。
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