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部屋に入るなり、文緒が抱きついてきてキスをねだる。
腰を抱き寄せ、キスをする。
だけど、それ以上はお預けだ。
「文緒、勉強だ勉強!」
「えー」
抗議の声をあげるが、俺だってその先をしたいんだ!
文緒の顔を見るのも久しぶりなのに。
俺の分身だって文緒にこんにちはしたいって言ってるんだ!
……黙れ、下半身。
俺は「百人乗っても大丈夫!」な物置クラスの箱の中に下心と欲望を仲良くセットにして詰め込み、マトリョーシカ状態でたくさんの箱の中に詰め込み、理性の鎖でぐるぐる巻きにして宇宙のかなたに送り込んだ。
おまえら仲良くブラックホールに飲み込まれやがれ。
「いいか、文緒。俺だって久しぶりなんだ。朝から晩まで文緒を愛したい。だけどな」
あ、直球なことを言ってしまった。
文緒は俺の言葉に耳まで真っ赤にした。
「蓮さんにあれだけ言われてもそれを無視してことにおよぶなんて、いくら俺がMでも無理」
いや、だから俺、もうちょっと言い方があるだろう。
「Mってなに?」
文緒が天然なのは知っていたけど、Mを知らないなんて……。
「とりあえず、だ。期末テスト、十位以内に入るまで、俺たち禁止な」
なにを、は言わない。
「……キスもだめ?」
少しうるんだ瞳で俺のことを見上げるように言ってくるけど、キスだけで止まるわけないのが分かっているからつらいけど……。
「キスも駄目。さっきので当分はお預けな」
泣きそうな文緒を抱きしめて、頭をなでる。
こら、俺の下半身。
文緒を抱きしめただけで反応するな、この馬鹿もの!
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