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仕事中にも関わらず、蓮さんはことあるごとにそのあたりのことをしきりに言ってくるし。
兄貴は兄貴で俺をこき使いまくるし。
俺だってこの慣れない環境に覚えなくてはいけないことにとストレスはたまる一方。
せめてだな、文緒相手に吐き出させてくれよ!
文緒と約束した手前、セルフもできないし……。
お屋敷には寝に帰るだけの状態。
朝だって佳山家に行くには行くけど文緒が起きて来る前には兄貴にせかされて会社に向かっている状態。
あああ、ヘタレニートな獣医に戻りたい。
いくら文緒との将来のため、と言ったってその前段階でこんなだったら、将来もなにもないよ。
泣きごとを言いたかったけど、それはきっと文緒も同じことだと思ったから……俺は我慢した。
なにより救いなのは、土日はしっかり休ませてもらえること。
愛する文緒が目の前にいながらキスもできないのはつらいけど、それでもまだ一緒にいることができる、ということだけでもありがたい。
それに、身体のつながりだけではなく、心の絆を深めろ、という蓮さんのいつもの説教の一環、なんだよな。
確かに俺、文緒とひとつになってからはそれはもう猿のように……って年甲斐もなく恥ずかしくなってきた。
怒られても仕方がなかったよな、あれは。
俺は反省した。
……反省してもキスさえできないんだけどな!
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