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だがしかし隠し事がないと言えば嘘になる。いや、ここでアレを見られてはまずい。
「そんなものは無いぞー」
明らかに俺は動揺していた。いかにも普通を装ったものの不自然だった様子。
「怪しいわねー……。まああえて探りはしないわ」
ニコニコ笑いながら言ってきた。こいつ、何か悟ってやがるな。
時計を見るとまだ七時十五分だった。
まだ登校までは余裕がある。
「時間が余りすぎてるけど、どうする?」
「んー……。私はここにいるだけでなんか新鮮というか、楽しいわ」
「そうかい」
こいつはよくわからない奴だ。
学校でも特別目立つわけではないが、何を考えているのかよくわからない。
昼休みにいきなり俺を連れ去っては、屋上で空模様の観察という滅茶苦茶つまらないことをしたり、授業中は躊躇なく俺に話しかけてくる。まあ俺もそこまで授業に集中しているわけではないが。
そんなことはさておき、この場では、沈黙が続いていた。
その沈黙を破ったのは柚木からだった。
「あのさ、三日後の文化祭。あんた誰と回る?」
「まだ考えてないな、お前は?」
「私は最初一人で行動しようと思ったんだけど、やっぱり退屈になりそうだわ。
丁度いいわ京本、私と回る?」
ニヤニヤしながら何を言い出すんだこいつは。
「別に付きやらんわけでもない、いいぞ」
「素直になりなさいよ、そんな遠まわしに言わなくても」
この瞬間。無性に腹がたった。
「お前なぁ……」
ため息交じりに言うと柚木はアハハと笑いだし
「冗談よ冗談、まああんたと一緒に回るのも悪くないなって」
「ああ、そうかい」
時計を見るとまだ全然時間は進んでいなかった。
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