第一章【不気味な朝】

11/14
前へ
/36ページ
次へ
だがしかし隠し事がないと言えば嘘になる。いや、ここでアレを見られてはまずい。 「そんなものは無いぞー」 明らかに俺は動揺していた。いかにも普通を装ったものの不自然だった様子。 「怪しいわねー……。まああえて探りはしないわ」 ニコニコ笑いながら言ってきた。こいつ、何か悟ってやがるな。 時計を見るとまだ七時十五分だった。 まだ登校までは余裕がある。 「時間が余りすぎてるけど、どうする?」 「んー……。私はここにいるだけでなんか新鮮というか、楽しいわ」 「そうかい」 こいつはよくわからない奴だ。 学校でも特別目立つわけではないが、何を考えているのかよくわからない。 昼休みにいきなり俺を連れ去っては、屋上で空模様の観察という滅茶苦茶つまらないことをしたり、授業中は躊躇なく俺に話しかけてくる。まあ俺もそこまで授業に集中しているわけではないが。 そんなことはさておき、この場では、沈黙が続いていた。 その沈黙を破ったのは柚木からだった。 「あのさ、三日後の文化祭。あんた誰と回る?」 「まだ考えてないな、お前は?」 「私は最初一人で行動しようと思ったんだけど、やっぱり退屈になりそうだわ。 丁度いいわ京本、私と回る?」 ニヤニヤしながら何を言い出すんだこいつは。 「別に付きやらんわけでもない、いいぞ」 「素直になりなさいよ、そんな遠まわしに言わなくても」 この瞬間。無性に腹がたった。 「お前なぁ……」 ため息交じりに言うと柚木はアハハと笑いだし 「冗談よ冗談、まああんたと一緒に回るのも悪くないなって」 「ああ、そうかい」 時計を見るとまだ全然時間は進んでいなかった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加