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「あ、あの……」
「……!? びっくりしたぁ……」
「!? 何やってんだお前…こんな時間に……」
「それはこっちのセリフ。あんたこそ何やってんの?」
「いや……俺はな……あれだよ、散歩ってやつだよ」
「散歩ぉ!?」
アハハ、と笑われた。
こいつは俺の後ろの席の柚木夕奈、ファッションにはこだわりがあり
髪型は高校生にしてはセットの出来が良い。
毎日違う髪型で、ゴムやピン、時には巻き髪で来たりと七変化を遂げている。
若干、染めてはいないものの茶色が混ざっていてそれがいいという男子も少なくはない。
ミディアムな長さの髪をなびかせながら言う。
「なんで散歩? 初めてだよね、ここの公園に朝来るの」
「気分が向いただけ、柚木こそ何でここにいるんだ?」
「私は毎日ここにいるの」
「毎日っ……!? 大変だな、こんな朝早くに」
「大変じゃないわよ。京本の生活習慣が悪いんじゃないの?」
京本というのは俺の名前である。
「そんなわけあるか、誰が朝六時に公園行こうと思うんだよ」
「朝の公園はいいものよ? ほら、こうやって花を見てるだけで心が穏やかになるの。
人間ってこういうのも必要だと思うのよね。今の現代社会、大人は毎日毎日同じことを繰り返し
社会の歯車の一部として働いているの、一体何のために働いているのかしら。確かに家庭や
生活、娯楽のために働いてはいるのだけれども、いまいち私にはその仕事に楽しみとか
やりがいを感じられないのよね」
「……お前はこんな時間によくそんなに口が回るな」
「で、私が結局言いたいことは退屈ってことなの。毎日がね、別に生きることに絶望しているとか、そういう意味じゃないわよ。ただ退屈なだけ」
「そうか……としか言いようがないんだが。なんか趣味とか打ちこめることとかないのか?」
「ないわよ、趣味と言ったら昔やってたカレンダー集めかしら」
「それは趣味とは言わないだろ、ほらもっと、野球だとか、バトミントンだとか……」
「私、運動向いてないから」
「あぁ、そうかい」
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