第一章【不気味な朝】

9/14
前へ
/36ページ
次へ
「いや、そんな考えなくてもいいぞ」 「別に考えてないわよ。じゃあお言葉に甘えて少し上がらせてもらうわ」 「おう、じゃあついてこい」 なぜか、疑問だった。 なぜ俺が柚木を家に誘ったのか自分でもわからない。 不思議と家につくまでの道は話す話題もなく、静かな帰路だった。 柚木は道端の花や草を少し見つめてはまた他の花や草へ、視線を送っていた。 花が好きなのかわからないが、不思議な奴だ。 「着いたぞ」 「あら、大きいのね。お邪魔するわ」 大きいのね、と言われ少し気分が高まったわけだが。 門を開け、玄関を開ける。鍵が開きっぱなしだった。 空き巣に入られたらどうするんだと思ってしまった。  決して玄関は広くなく、綺麗とは言えないのが我が家だ。 親に柚木を家に上がらせたのをバレると面倒なことになるのは安易に想像できた。 口元に人差し指をあてがい、静かに俺の部屋に誘導した。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加