第一章

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「だから恰好と行動がまるでマッチしていないんだよ!人ん家の壁に穴ぼこ開けて片目だけ覗かせてお前は覗き魔常習犯か!?」 なんの因果か(壁に因果なんてもの、そもそももったこともないが)、俺は今その穴、つまりは壁に向かっていはなしかけているわけなのだが、決してそこに向けての要求ではないと言っておく。 皮肉なことに、穴の少し上にある二つのシミのせいで顔模様に話しかけているように見えてしまうのは避けようもない事実だが、しかし、自身の名誉のためにあえて口すっぱく言っておくけれど、俺は少女に向かってしゃべっているのである。 ところがその少女、ここからでは姿を垣間見ることはできない。前述のプロフィール通り少女の所在は向かいの部屋であり、よしんば見えたとしてもそれは暗い闇の先にあるホラー映画よろしくな彼女の目が見えるだけなのだが、果たして、これはいったいなんの茶番なのだろうか。 「なにをいっているのですか。貴方さっき私が警視庁捜査一課の課長だと言いあてたではありませんか!」 隣のアパートの窓。二度がらりと音がすると、少し逆切れ気味の少女が向かいに現れた。フィール・然だ。 「やっぱりそうだったのか!?しかも課長かよ!?騙しやがって!つか窓開けて覗くくらいならはじめから穴なんて開けんなや!丁寧に筒でコネクトまでしやがって。一体なにが目的だ!」 穴は何のためにあけたんだよ!?というか早急に直せ!
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