第一章

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「穴?なんのこと?」 「おい。そういうセリフは魔法でもつかってせめて穴を塞いでから発言するんだな。お前以外の誰が犯人だって言うんだよ!」 「→」 「俺じゃねえよ!」 本当ははじめのうちから抗議するつもりだった。バイトからつかれて帰ってきて、そうそうに妙な穴を発見、そのあと2日ほど放置した後にとある鼻息を検知、がらりと窓を開けたその先には、魔法少女もどきな女がなぜか真顔で立っており、おののいた俺はそのまま窓を閉め、ここ1週間ほど気づかぬふりをしてきたのだ。 いや。普通は驚くと思う。驚いて抗議のひとつでもするのだろうが、しかし、俺の中では関わりたくないという心情が大きく、むしろ接触したら負けだとも思っていたので、引っ越すあてもなく、だんまりという形で事を収めていた。 しかしだ。 どうだろう。例えば夜な夜な自分の名前を呼ぶ不可解なささやき声がこそこそと聞こえてきたり、明け方まで鳴り響く身に覚えのないゲーム音がピコピコと聞こえてきた日には、さしもの菩薩様であろうとも、堪忍の袋を炸裂させるのではないだろうか。 というか菩薩でもない俺は炸裂させた。 炸裂させないとスペルで殺されてしまうような気がした。 「ふむ。しかし。魔法を信じると?」 「信じねえよ」 わくさん知ってたじゃねえか。あきらかに現世人だよ。
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