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ギギィと蝶番を軋ませてドアが開く。ドアから出てきたのは活発そうなショートヘアの同い年位の少女だった。
「こんばんは。向かいに住んでる者なんだけど――」
――ちょっと挨拶に来ました。と言う前に
「あ、ちょっと待っててください。今ここの主を呼んできますから!」
活発そうな子は屋敷の中に引っ込んでしまった。
しばらくすると窓の外から見たたやりなさげな少年と宙に浮いている美少女が出てきた。
「あの、なんのご用でしょうか?」
心なしか少年は少し疲れたような顔をしている。それを見て早めに切り上げようと心に決める。
「ああ、ただの挨拶だよ。俺は向かいに住んでるだ。おっと、これは差し入れ」
そう言って俺は持ってきたケーキを少年に渡す。
「あ、どうもありがとうございます」
「あ、そうだ。俺の名前は神裂 湊。湊って呼んでくれ」
「えっと僕は夏目智春。好きなように呼んでくれて良いよ」
「じゃあ、智春って呼ぶな」
そんな感じで自己紹介を済ませた俺はその場を去る。
『ねぇ、トモ。あの人カッコいいね』
去り際にずっと智春の後ろに浮いていた少女がそう漏らすのが聞こえたので、つい飛鳥と話すときのように軽口を出してしまう。
「ありがとう。君も凄く可愛いよ、守護霊ちゃん」
言ったあとになってしまったと思ったが、やってしまったものはしょうがない。
唖然としている二人を無視して俺は帰路についた。
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