φ噛み合う歯車

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次の日 昨日と同じように飛鳥に叩き起こされ、学校の準備をして朝食をとり登校。 学校の名前は、洛芦和(ラクロワ)高校という。 ラ・クロワと言うのはフランス語で十字架を指すのだそうで、だからと言って無理に学校名を漢字に直す必要があったとは思えないが、とにかくミッション系の共学校である。 それほど大きな学校ではない。学区内では一応進学校だと言われているが、受験指導に特別熱を入れている様子もない。ミッション系とは言うが、聖書朗読やらがあるわけでもない、まぁ普通の高校だ。強いて言えば教会が援助してくれているので、私立のわりには学費が安いということと、制服のあちこちに十字架の紋章が縫いこまれていることくらいだ。俺が言うのもなんだが、下校中に吸血鬼に襲われるような機会があれば、きっと役に立つと思う……多分。 『やっぱりここの制服、可愛いね』 厳めしい鉄製の校門をくぐりながら、飛鳥が言う。 今朝の彼女は、真新しい洛芦和高校の制服に身を包んでいる。俺と二人で歩いている姿を誰かが見たら、仲のいい高校生カップルだと思うだろう。今片割れは幽霊で、誰にも見えはしないのだが。 洛高の女子の制服は、植民地時代の修道女だか聖歌隊だかの衣装をイメージして作られているらしく、レトロでゴス調な雰囲気がなにげに飛鳥に似合っている。だが、こんなスカートの短い修道女がいるとも思えん。 とりあえず… 「飛鳥、毎度の事だがどうやって着替えてんだ?」 どういう仕組みになっているのか分からんが、飛鳥はいつも流行の可愛らしい服を着ている。これまでも色々と考えてみたが、謎は深まるばかりだった。 飛鳥は、ふふ、と少し得意げに微笑み 『ないしょ♪』 と何時ものように返された。
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