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あの後、自己紹介を含めたホームルームが終わると、今日はもう帰っていいと言われた。世間には入学式の直後から授業が始まる忙しい学校もあるというのに、洛高の場合はこんなものだ。
とりあえず俺は昨日智春の家に来ていたこの洛高の科學部(カガクブ)の部長代理である黒崎朱浬(クロサキ シュリ)に会うために化学準備室に向かう。
ん?なんであの時の美人の名前を知ってるかって?それは勿論俺が転生者だからだよ。
そんなわけで俺達は化学準備室へと向かっていた。
洛高の校舎は俺が通っていた中学なんかに比べると、ひとつひとつの建物が小さく、かわりに数が多い。化学準備室は理科教室棟と呼ばれる、なにやら研究所っぱい校舎の一階にあった。
化学教室に隣接した、細長い部屋だった。壁際に薬品や教材を収めた戸棚が並んでいて、中央に教員用のスチール机が置かれている。
それだけなら、わりとまともな教室に見えるのだが、奇怪なのは部屋の奥にある意味不明のオブジェだった。
それを見た飛鳥と七海がなんか笑いこけていた。どうやらこの奇怪なオブジェの何処かが笑いのつぼに入ったらしい。
「……ん?」
俺達が準備室の前で立ち止まっていると、奥の扉が開いて、よれよれの白衣を着た男が姿を現した。
「――見ない顔だな。新入生か?」
どうやら化学担当の教師らしい。男は俺達を手招きした。そして無言で余りもののパイプイスを指さした。座れ、ということか。
俺は七海と顔を見合せ、どちらからともなく準備室に足を踏み入れた。見慣れない造りの教室を、飛鳥と七海が興味深そうに見回している。
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