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あの後、意識を取り戻した俺はよくある転生ものの物語みたいに赤ちゃんになっていたりした
あの三年間は思い出したくない
あれはとんでもない羞恥プレイだ
母親が美人だったからなおさらだ
久しぶりに飛行機に乗ったのは、12歳の時
幼いころから知っているなじみの少女の祖父母が、たまたまロンドンに住んでいたとか。
彼らから、娘と一緒に遊びに来てくれと、二回目の招待されてしまったとか。
そんな感じで。
世の中には成り行きというものがあり、自分の意思とは無関係に飛行機に乗せられてしまうということもある。
成田発メイデイ・アトランティック航空MS901便。
ヒースロー行き。
中学校の入学式を間近に控えた、春休みのことだった。
その時気付いていれば良かった。
この世界に生まれる前の世界でこの後どうなるかを俺は本で知っていたから。
とりあえず指定された飛行機の座席に座って同行者である幼なじみと世間話をする。
幼なじみの名前は、飛鳥という。
松原飛鳥。
乙女座のAB型。
祖父母に会うのが楽しみなのか、今朝からずっと笑顔だ。
その飛鳥は、窓際に座る俺の隣でファッション雑誌を読んでいる。
それでも顔は相変わらず笑顔である。
その様子に呆れながら、窓の外に視線を向けようとすると……
「バカ、エロ、スケベ、セクハラっ!!」
怒鳴り声が聞こえてきた。
聞こえてきた方を見ると、同い年ぐらいの男女が居た。
どうやら痴話喧嘩らしい。
しばらくその二人を見ていると、男の子方が何かに気づいたらしく女の子に話しかける。すると、女の子は満面の笑みを浮かべた。
「あはは。見てみて、女の子が男の子の手を握ってるよ。そうだ、私もしてあげる!」
そう言って彼女は俺の手を強く握ってきた。
「―――ずっと一緒に居ようね」
彼女の言葉は正しかった。
半分だけ。
その日、俺らの乗った飛行機は、海に墜ちた。
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