ぼくはどこにいる

　いらないものは全て処分した。それらは全てごみ袋に詰め込んで、隣の町内まで捨てに行った。必要なものは全てリュックに詰め込んだ。リュックは新品だ。この間いろんな店をめぐって、これだというものを探してきた。べつにこれに備えて買ってきたわけではないけれど、はじめて使う日がこの日だなんて、嬉しいような情けないような、悲しいような、なんともいえない気分だった。
　お金も全部おろしてきた。バイトの給料はほとんど手をつけていなく、ほぼ丸々残っている。学生の僕から見るとけっこうな額だった。それを小分けにして身につけることにし、リュックにも入れた。本当は大学に行く足しにするはずだった。
　帰ってきた家族が階下で笑い声を響かせている中、僕の準備は完了した。
　あとは消えるだけだ。この家から、この小さな世界から。僕は外に出る。