ぼくはどこにいる

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 ああ、と膨らんだリュックを眺めて息を吐いた。それを見ると僕の心は軽くなる。嘘みたいに、羽がついているかのように、ひどく軽く、軽くなる。こんなにも晴れやかな気分は初めてだった。  ああ、ああ、僕は今、とても気分がいい。このまま殺されたってかまわない。すんなりと、笑いながら成仏できる。  うふふ、えへへ、と笑いながらふとんの上にころがった。僕は明日、消える。みんなの前からいなくなって、どこか遠いところへ行く。ずっと僕はこの日を待っていた。僕が消えても誰も気付かないような、困らないような存在になることを待っていた。消える日を待っていた。ずっと、ずっと。  そしてそれが今日。消えるのは明日だ。  僕はいい気分のまま、眠りについた。  
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